「ほんとうにおぼえていないの?」 五歳の自分が言った。 なにを? と問い返したつもりが、声は出ていなかった。 「あたしのこと、ほんとうにおぼえていないの?」 視線を手渡された日記に落とし、それから五歳の自分に戻す。すると、幼女は消えていた。 (『13』) 古川日出男さんのデビュー作です。面白かった! 2作目の「沈黙」(『沈黙/アビシニアン』角川書店)よりも『13』の方が好きです。読んでいる人間のイメージを圧倒的に支配し、導く文章がとても心地良いです。読みやすい。でも軽くない。 ひとりの少年が自分の驚異的な能力と感性を以て観た世界。小さな偶然が積み重なって起こる、まるで奇蹟のような現象。一番最後に、一度だけ起こる本当の奇蹟。これはそういうお話です。 * コメント *
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