「どういう生き方を選ぶかはあんたの自由さ。でも、あたしがさっきの話を子どもにするんだったら、最後にこう云うね。……お聞き、坊や。真珠もルビーも消えたわけじゃない。今もおまえさんの体のなかにあるんだよ。それは、秘密の呪文さえ唱えれば、取りだすことができる。世の中にはその呪文を知っている人が必ずいるんだ。さあ、元気を出して、探しに行ってこらんって。」 「……そんな人は見つかるはずがない、」 「探してみもしないで、何を云うんだろうね。あきらめるのは美徳じゃないよ。怠け者ってことだよ。」 「でも、誰が知っているかもわからないのに、どうやって探すんですか、」 「おまえさんは五歳の子どもかい? 訊けばいいんだよ。あたしなら、逢う人ごとに訊くよ。これこれの呪文を知っていますかって。」 「笑われても?」 「平気さ。これくらいのことで笑うのは、心の貧しい人間なんだから、そんな人たちと親しくなる必要はないと思えば、なんでもないことなのさ。呪文を知っている人にぶつかるまで、辛抱強く試してみるよ。たくさんの人に会うことも大事だね。」 (「メルカトル」)
05/10 18:10 | 私家抄本室 |
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