「殿方ならどなたでも耳と尻尾くらいはお持ちですわ。よくご覧なさい、鬘の脇でぴんと耳を立てたり、上着の下で苛々と尻尾を動かしたり、こっそり牙を覗かせて唸ったり、袖口から覗いた爪を隠したりなさるから」 (「モンティニーの狼男爵」) 革命直前のフランスを舞台にした、田舎領主・モンティニー男爵と尼僧院で育ったドニーズの恋物語。もっとも派手で栄華を極めた時代でありながら、決して美男でも美女でもないふたりが田舎町で繰り広げる真剣な恋の物語は、この上なく贅沢なお伽話です。 佐藤亜紀さんの小説を読むと、いつも映像化したらどれほどかっこいいだろうと思うのですが、色々想像しているうちに絶対に映像にはできないことに気づくのです。佐藤さんの小説には文章表現でしか機能しない仕掛けが必ず隠されていて、それが物語の最大の面白さになっている。映像で見てみたい、でも映像にしたら面白さは半減……読み物としてこれほど贅沢なものはない、といつも感嘆のため息をもらさずにはいられません。 * コメント *
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