そうじゃ、信長様は神なのだ。
けらけら笑いながら飛び跳ねた藤吉郎は、突然、思い出した。自分は彼らと一緒に死ぬことはできない! いきなり斬りつけられたような悲しみが激痛とともに走り、藤吉郎の視界は真っ暗になった。彼はたわいなく篝火の下にくずおれた。
(「信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」)
信長は両性具有であった、という設定で描かれる伝奇小説です。両性具有ということですので信長がこれでもかというくらい美しいのです! 哀しく美しい孤高の王・信長! たまらん!
信長に焦がれる秀吉と光秀、信玄・謙信との呪術合戦、凄絶な本能寺の変。さらに、20世紀のヨーロッパで古代ローマの少年皇帝ヘリオガバルスと信長を結び付けて考察する、演劇家アントナン・アルトーと東洋人の美青年・総見寺のやり取りが重なって物語は予想もしない方向へすすんでいきます。
読みどころがとてもたくさんあって、こんな言い方も変ですが(笑)お得な1冊だと思います。
アルトーの『ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト』も読まなければ。なんかもう古書じゃないと手に入らなさそうなんだけどね…。